水冷ユニットの取り付けと4つの注意点
Intel の Core i9-10900K が世の中に登場してから、その冷却の大変さに自作PC界隈をざわつかせました。この記事では、CORSAIR の iCUE H150i RGB PRO XT を採用して、誰もが高性能 CPU としっかり向き合っていけるような手引きになればと思っています。
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強力な CORSAIR の水冷クーラー
Intel の Core i9-10900K は、非常に高性能ですがとにかく熱を発生させてしまう CPU です。なので、性能重視で CORSAIR の簡易水冷クーラーである『iCUE H150i RGB PRO XT』に頼ることにしました!
ラジエータが大きいだけあって、ファンも3つと強力な冷却ができるようになっています。
これ以外に、説明書がちゃんと付属されていますよ。
水冷クーラーのメリット・デメリット
iCUE H150i RGB PRO XT の冷却性能が高い理由は、シンプルにラジエータのサイズが語ってくれています。360mm長のラジエータなので、水温を思いっきり冷やせると考えれば納得ですね。
ただ、その大きさゆえにデメリットもあります。
- 取り付けできるケースが限られる
- 干渉して付けられないパーツが出てくる
- 取り付けがちょっと大変(慣れ)
でも、実際に水冷ユニットとケースの現物がないと、干渉の確認って難しいですよね…
せっかくの高性能 CPU なので、良い水冷を取り付けてあげたいけど、組み立てに自信がない!パーツ選びに失敗したくない!というかたの助けになれば幸いです。
Core i9-10900K は水冷クーラーが必須
LGA1200 の超高性能 CPU である「Intel Core i9-10900K」ですが、冒頭で紹介したとおり冷却が大きな課題になっています。
それを裏付けるかのように、本製品にはリテールクーラーがついていません。どうせ使わないので都合が良いですが、こういった情報は事前に知っておいた方がビックリせずに済みますね。
空冷クーラーで挑戦している人も多いようですが、結局排熱が追い付かず、扇風機で対処したり、コア数を減らしたり、水冷に換装したり…そんな目にはあいたくないですよね。
水冷ユニットの注意点3つ
注意点1:ケース選び
今回搭載する水冷ユニットは、ラジエータ長が360mmのため、ケース選びが最重要と言っても過言ではありません。仮に、もし小さいラジエータだとしても、ケース側が対応していなければ水冷ユニットの取り付けができません。
iCUE H150i RGB PRO XT が搭載できるケースを何点か紹介してみます。
ショップサイトやメーカーサイトで確認すればわかりますが、どれも一般的なケースに比べてとても大きいサイズになっています!これらのケースはすべて『Extend-ATX』という規格で、一般的な『ATX』という規格より大きいサイズなのです。
今回のように、巨大なラジエータを装着したり、ストレージをたくさん設置して RAID 構成にするような人は、拡張性の高い Extend-ATX といった大きなケースを選択することになります。
※Extend-ATX なら必ず水冷ユニットを装着できるというわけではありません。メーカーサイトなどでしっかり確認するか、本記事を参考に選んでみてください。
今回は、コスパを考えて『Fracral Design の Define R6』を採用しました♪
注意点2:マザーボード選び
マザーボードくらい好きなものを選びたい!…と思いますが、ゲーミングマザーボード特有の干渉ポイントがあります。
以下の図をご覧ください。
「×マーク」がついているところが干渉ポイントです。マザーボードに付いているヒートシンクや、バックパネルにそこそこの高さがある場合は、ラジエータのファンと干渉する可能性があります。
メーカーサイトを確認しても、残念ながらヒートシンクの高さまでは記載がないことが多いです。
店頭で直接目視できるのが理想ですが、自信がなければ以下で紹介しているマザーボードを参考にしてみてください。
今回は、ASUS Z490 を選択しました。
注意点3:メモリ選び
メモリにも干渉注意報が出てきます。この記事を書くきっかけになった問題児です。
メモリで干渉するわけないと思っているかたは、私と同じ失敗をしないよう予習してもらえれば幸いです。
最初は上記のメモリを購入しました。G.Skill 製なので品質は信用していますし、DDR4-3600 の 16GB x 2 で申し分ないスペックです。
ただ、写真を見るとわかりますが、メモリを覆っているヒートシンクが突出しています。まさに、コイツに干渉してしまいました。あと 2mm ほど短ければ取り付けできそうでしたが、自作パソコンにおいてこの干渉の軌道修正がほぼ無理なのは、経験者なら痛いほどわかると思います。
思い切ってヒートシンクを外そうとしましたが、私は中央のプラスチック部しか取り外せませんでした。あまり冒険はするものではないですよ…
高性能なメモリほど、おしゃれなヒートシンクがついていることが多いです。
メモリも高さの記載が有ったり無かったりするので、ヒートシンクの高さが控えめだったり、ヒートシンクがないメモリの採用をオススメします。
今回はヒートシンクがないメモリを採用しました。
エアフローをちゃんとしていれば、そもそもメモリのヒートシンクがなくても十分冷却できると思うんだけどなぁ…
注意点4:5インチベイのパーツ
何度も繰り返していますが、iCUE H150i RGB PRO XT はラジエータの長さが 360mm です。
ケースの奥行または高さが非常に長い製品でないと、5インチベイへのパーツの取り付けは厳しいでしょう。
定番の CD/DVD ドライブを取り付けてみようと思いましたが、余裕で無理でした。
水冷ユニット取り付けフロー
さて、いよいよ取り付けに関して、写真つきで紹介していきます。
CPU の取り付け
Intel Core i9-10900K のソケットは「LGA1200」です。今回のマザーボードは「Z490」なので、ちゃんと対応していますね。写真の右下あたりにも LGA1200 とプリントされています。
向きに気を付けて、慎重に取り付けてあげてください。
CPU を装着したら、同タイミングでメモリも取り付けてしまいましょう。
マウンタの取り付け
水冷ヘッドを取り付けるためのマウンターを装着します。マザーボードの裏からマウンターを通します。
このマウンターのおかげで、装着が安定するだけなく、様々なCPU(マザーボード)に対応できるようになっているわけですね。
マウンターを取り付けたら、ケースにマザーボードを取り付けてしまいましょう。
エアフローの計画
エアフローとは、パソコン内部を通過する空気の流れのことです。
当たり前の話ですが、パソコン内部の空気は『吸い込み』と『吐き出し』があって初めて風が起きます。そして、風が起きることによって、熱を運び出すことができます。
ラジエータにファンを取り付けることになりますが、ファンの風向きを考えるきっかけとして、以下に2つの図を用意しました。
ラジエータ部から熱を逃がすパターンです。空気の流れに無理がなく、鉄板といえるエアフローでしょう。正面から取り込むファンの力が強ければ、もっと効率よく冷却できることになりますね。
デメリットとしては、やや熱を持った風がラジエータを通過する点でしょう。
今度は逆に、ラジエータ部で吸気するパターンです。外部の空気でダイレクトにラジエータを冷却できるのが最大のメリットですね。
ただ、デメリットは暖気を取り込んでしまうことですね。グラフィックボードも熱を持ちますし、NVMe のストレージも熱が大敵です。
エアフローによって、冷却効率に違いが出ることがわかりますね!
今回は、鉄板の排気パターンで装着します。
ラジエータにファンを取り付け
前項で解説したように、ファンの向きに気を付けて取り付けましょう。
ファン本体に、回転方向と風の向きを示す矢印がついているので、その矢印を確認して取りつければミスを防ぐことができます。
ラジエータをケースに取り付け
いよいよ、ラジエータをケースの天板に取り付けていきます!
ラジエータはそこまで重いわけでもないですが、片手で持ちながらねじ止めすることになるので、ちょっとだけ大変です…
天板に取り付けると、水冷ヘッドとポンプがぶら下がった状態になっていると思います。(撮影用にマザボを外してあります。)
水冷ユニットは精密機器なので、くれぐれも取り扱いには注意しましょう!
水冷ヘッドの取り付け
すぐに取り付けたいところですが、せっかくの高級品なので、グリスも良いものに交換してあげましょう!
グリスクリーナーは何でも良いですが、グリスは『アイネックスのナノダイヤモンドグリス』にしてあげましょう。水冷ユニットはグリス交換が楽なので、グリスは常備しておいて良いと思います。
しっかり装着できれば、CORSAIR の印字が真上に来るような形になるはずです。このとき、ポンプが無理にねじれていないかチェックしておきましょう。
あとは、各種ケーブルを接続するだけです。空冷と違って接続するケーブルがとても多いです!説明書にもちゃんと解説があるので、もれのないよう接続してあげましょう。
通電したら、以下を確認してあげましょう。
- ファンが回っているか
- ファンの回転方向は正しいか(エアフロー)
- CPUが冷却されているか(ポンプの動作)
- ヘッドが光っているか(ケーブル確認)
- 異音がしていないか
CPUの負荷テストと温度計測
定番ソフトの『OCCT』を使って、負荷をかけつつ温度を計測していきます。
上記のスクリーンショットは、「15分間 CPU に負荷をかけ続けて、温度がどうなっているか」を表しています。
結論を簡単にまとめると、『平常時38℃』『負荷時の平均52℃』『負荷時のピーク61℃』といった結果になりました。基準がわからないかた向けに説明すると、これは十分すぎるほど冷却ができていて、まだ余裕がある状態です。
そもそも、Core i9-10900K の負荷率がずっと100%になる状況の方が珍しいはずです。少なくとも、定格動作時は十分すぎる冷却ができることは確認できましたね!
ベンチマークは総合力なので、純粋に CPU の性能を測れるものではないですが、一つの基準にはなりますね。FHD では余裕のスコアでした。4K ではスコアが低下しましたが、ほぼ不満は出ないと思います。
全パーツ一覧
パーツが干渉したり、調べるのが面倒!というかたもいると思います。
今回作成したパソコンのパーツ一覧を用意したので、参考にしてみてください。
全く同じものを用意すれば、干渉を気にせず高性能パソコンを作ることができますよ!あとは好みでアレンジしてみてください!
以上、水冷ユニットの取り付けと4つの注意点でした。